読むとゾッとする? ゴールドマン・サックス、気候変動の影響に関するレポートを公表

冠水した道路

REUTERS/Lucas Jackson

  • 気候変動が世界の都市に与える影響に関するゴールドマン・サックスのレポートは、読むとゾッとする。
  • 気温の上昇は、病気のパターンの変化や、より激しく長期にわたる熱波、より破壊的な気象現象、飲用・農業用の水の質およびアクセスへのプレッシャーにつながる。
  • 大都市は洪水のリスクも高く、ニューヨーク、東京、ナイジェリアのラゴスではその一部が海に沈む危険性もある。

ゴールドマン・サックスが公表した気候変動が世界の都市に与える影響に関するレポートは、読むとゾッとする。

アマンダ・ヒンドリアン(Amanda Hindlian)氏率いる同社のグローバル・マーケッツ・インスティテュートは、世界の大都市の「重大な」リスクの可能性に警鐘を鳴らした。大都市は特に、頻繁に起きる嵐や気温上昇、海面上昇、高潮に弱いという。

ゴールドマン・サックスによると、都市部は世界のGDPの約80%を生んでいて、世界の人口の半数以上が暮らしている —— その割合は、2050年までに3分の2まで増える見込みだ。世界の人口の約40%が海岸から100キロメートル以内で暮らし、10人に1人は海抜10メートル以下の地域で生活しているという。

中でも、ニューヨーク、東京、ラゴス(ナイジェリア)は高潮が起きやすく、近い将来、大きな被害をもたらす洪水に見舞われる可能性があると、ゴールドマン・サックスは指摘している。海抜11メートル以下のマイアミ、アレクサンドリア(エジプト)、ダッカ(バングラデシュ)、上海にも大規模な洪水のリスクがあるという。

地図(アメリカ)

ニューヨーク。

Goldman Sachs

ゴールドマン・サックスが警告する主なリスクは以下のとおり。

  • より頻繁に起きる、より激しい、より長く続く熱波

人間の健康や生産性、経済活動、農業に影響を及ぼす。「地表温度の上昇によって、永久凍土がとけ、メタンや二酸化炭素の大気放出が進むことで、温暖化が悪化する可能性がある」という。

  • 嵐や暴風、洪水、山火事といった破壊的な気象現象

これはニューヨーク、東京、ラゴスだけではない。「ほかにも、上海やダッカ、ムンバイ(インド)、カラチ(パキスタン)など、海抜の低い海岸沿いの都市やすでに洪水が発生しやすい都市は、それぞれ1500万人以上の人口を抱えている」という。

  • 変化する病気のパターン

「気温の上昇によって、病原媒介者が熱帯地域から免疫の少ない人々が暮らす地域へと移動する可能性がある。これは、マラリアやデング熱といったウイルスだけでなく、水や食べ物を媒介とした病気にもあてはまる」という。

  • 変化する農業パターンと食料不足

「家畜は、気温上昇や飲料水の減少の影響を受ける可能性がある。海洋酸性化は水中生物にストレスを与え、現在の漁業パターンに影響を及ぼすだろう。こうした変化の一部はすでに起きている。例えば、気候変動の研究者の中には、海洋酸性化のせいでサンゴ礁が絶滅するだろうと見る声もある」という。

ゴールドマン・サックスは世界保健機関(WHO)を引用し、「世界の人口の半数が、早ければ2025年には水のストレスを感じる地域で生活することになる」としている。「水ストレスを感じない地域でも、雨や嵐の増加によって有害物質がしみ出したり、放出され、水質が悪化する可能性がある。こうしたダイナミクスが、飲用水へのアクセスから家畜や作物に与える水の不足(そして食料の供給への悪影響)、水力発電による発電量の減少まで、全てに影響を及ぼす可能性がある」という。

地図(日本、ナイジェリア)

東京(上)とラゴス(下)。

Goldman Sachs

ゴールドマン・サックスはこれらの要素全てが「経済活動に影響を及ぼし、建物から交通機関、水、ゴミの処理まで、インフラにダメージを与え、特に弱者に害を及ぼす」と指摘する。

レポートには、「そのタイミングや規模には不確かな部分もあるが、一部の都市がこうした影響に備えて今から投資を始めるのは、賢明な判断かもしれない」とある。「都市化への適応は、史上最大のインフラ構築の1つを進める可能性がある。その規模を考えれば、イノベーティブな資金活用が必要となるだろう」

グラフ(人口)

Goldman Sachs

[原文:Goldman Sachs released a 34-page analysis of the impact of climate change. And the results are terrifying.

(翻訳、編集:山口佳美)

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